COLUMNコラム
寒冷地での家づくり。大事なこと。2026.06.03
安曇野市 松本の工務店 ココチエ一級建築士事務所の矢倉です。
本日は、家づくりにおいて非常に重要な「窓」のお話、特にリクシルの高性能樹脂窓「EW」を採用する際によく話題に上がる「南面の窓はトリプルガラスとペアガラス、どちらにすべきか問題」についてお話ししたいと思います。
「南は日射取得のためにペアガラスが正解」は本当?
高断熱の家づくりを勉強されている方なら、こんなセオリーを耳にしたことがあるかもしれません。
「南側の窓は、冬に太陽の熱をたっぷり取り込む(日射取得)ために、あえて日射を通しやすいペアガラスにするのが正解」
たしかに、私たちの施工エリアである安曇野市や松本市は、冬の晴天率が非常に良い地域です。冬場でもお日様の恩恵をしっかり受けられるため、日中においてペアガラスの方が太陽の熱の取得量が上がるというのは事実です。
しかし、実は私たち建築士や技術者の間では、「このセオリーは信州のような寒冷地には適さない」ということは、共通の理解となっています。
その理由を、1日(24時間)のサイクルで少し論理的に考えてみましょう。
日が当たるのはわずか5時間。残りの19時間は「熱が逃げる時間」
寒い冬、いくら晴天率が良くてポカポカと日が当たっていても、有効な日射取得が期待できる時間は1日のうち約5時間ほどしかありません。
では、太陽が隠れている残りの時間はどうでしょうか? 実は、1日のうち約19時間もの間、日は当たらず、逆に室内の暖かい熱が窓から外へ逃げていく(熱損失する)時間なのです。
24時間のうち、熱を取り込めるのが5時間、熱が奪われ続けるのが19時間。 こうして数字で客観的に見ると、いくら日中の取得量が上がるといっても、19時間分の熱損失を見過ごすわけにはいかないことがお分かりいただけると思います。
深夜から朝方にかけての「放射冷却」の脅威
さらに長野県の冬で忘れてはいけないのが、底冷えのする夜間です。 特に深夜2時から朝方の4時頃にかけては、晴天率が良いからこそ起こる「放射冷却」によって外気温が急激に下がります。
この時間帯の窓まわりでの熱損失は相当なものになります。ペアガラスでは、この厳しい冷え込みに対してどうしても防御力が弱くなってしまうのです。
日射の「取得」と「遮蔽」…最後にモノを言うのは「経験」です
そしてもう一つ、窓の計画で忘れてはいけない視点があります。それは、冬の「日射取得」に対する、夏の「日射遮蔽(太陽の熱を遮ること)」です。
日射の遮蔽は、窓に頼るだけでなく、適切に庇(ひさし)を出したり、外側にアウターシェードを取り付けたりすることでしっかりとコントロールできます。しかし、驚くことに、意外とこのあたりの遮蔽計画が十分に実施されていないケースをよく見受けます。
日射の「取得」と「遮蔽」を最適なバランスで設計するには、単なる理屈や教科書通りの知識だけでは不十分です。 実際にこの安曇野・松本エリアで、どれだけの家を設計し、建ててきたか。 季節ごとの太陽の動きと実際の室温の変化をどれだけ体感しているか。まさに、設計者の「経験」が如実にモノを言う部分なのです。
ココチエの考えるベストな選択
こうした「1日の時間配分」「信州の厳しい冷え込み」、そして「日射の取得と遮蔽のバランス」を建築的・技術的な視点でトータルに考えると、私たちはこう結論づけています。
わずかな日射取得の増加を狙ってペアガラスにするよりも、全周トリプルガラスを採用して基本の断熱性能を底上げする。
その上で、日が落ちたらカーテンやブラインドをしっかりと閉めて、熱を逃がさないようにフタをする。夏の強い日差しに対しては、庇やシェードで確実に遮蔽を行う。これが、安曇野・松本エリアの厳しい自然環境を最も快適に、そして省エネに過ごすための最適解です。
一般的に言われているセオリーが、必ずしもこの地域に当てはまるとは限りません。信州の気候と自然環境を熟知し、豊富な実績を持つ技術者視点での窓選びで、後悔のない心地よい家づくりをしてくださいね。


